OOPS東京連絡所

シーバスレポート5   「京浜運河ジギングで奮闘の巻」

 

今回は、ありきたりですが実釣レポートです。想像の域を脱しないと思いますがお付き合いください。

 

東京連絡所は哲哉のほかに鈴木君という所員が増えて、さらに獲物を食べてくれる名誉会員の小山さんが増えたおかげで計4名(無理やり)となった。

 今日は鈴木君と東京湾シーバスジギングにはまった様子をお届けしたい。

 

 「鈴木君、今日帰りは何時ごろになるのかな?」

 「えーっと、今日は僕の当番なんで10時ごろです・・・」

 「じゃあ明日は?」

 「明日は6時で帰れます」

 「よし、決まった。明日ルアー買いに行こう」

 

 こんな感じでいつものショップへ買い物に行った。

「ブランカと、ギャロップ。それとシーフラワーははずせないか・・・・」

「そんなにたくさん買うんですか?」

「あたぼうよ!釣れ釣れの時に釣れるジグなくなっちゃったら悲しいっしょ!?」

「そ、そうです・ね」

仕方なさそうにジグを8本も買い込んで、フックまで仕入れた。

「トレブルじゃあだめなんだよ。これじゃなきゃ。」

「何でですか?」

「釣れるって書いてあるじゃん!」・・・・・・・

 

ともあれ、にわかジグラーの珍釣行は準備万端整えられた。忌まわしい天候以外は・・・・・

 

 携帯電話のバイブレーションが小刻みにテーブルを刺激して、3回ほど痙攣したあと息絶えた。鈴木君のメールによれば赤羽駅を通過したらしい。

 車にタックルを積み込み、待ち合わせの場所に向かった。

「実は昨日、船長から電話あって出船早めにしたいって言うんだよな」

「何でです?」

「午後の天候のことが気になるらしいよ。雨だって・・・・・」

鈴木君を拾うと、すぐにぽつんと来た。

寒くなるし、雨具の用意を忘れないようにしっかり打ち合わせしたにもかかわらず、鈴木君はぬれても平気なウエット仕様。なにやら怪しいアンダーウエアーを着用している。本気でぬれてしまう(しみ込んでしまう)覚悟のようだ。そうか、彼はサーファーだったのだ。

水中に漂うサーファーやダイバーと、我々の決定的な違い、それは寒いことなのに、ぬれても平気?キチガイだ。

これで翌日風邪でもひいたら俺のせいじゃないか!!?

それより、寒くて釣りにならないと困るじゃないか。

俺も釣りにならなくなるじゃないか・・・・・

 

何しろ到着までに本降りになってしまった。

この辺りで実は僕があまりに雨男なので、その話題に持っていきたいのだが、本人、本気で落ち込んでいるもんで、もうその話には触れないようにしたい・・

 

東京湾浦安エリアでは有名な船「S」の桟橋付近に到着したのは予定時刻の1時間以上前だった。何も食べていない鈴木君と小腹が空いた僕のために、駅前のコンビニで食料を仕入れ、仕度に入った。雨は既に土砂降り状態。カッパのフードにあたる雨の音でお互いの会話が怒鳴りあいになる。

「右舷にかたまって釣るんだって!」

「え?なんですか?」

「だから右側に並ぶんだって!」

「???」

「ここにロッドを挿しておくんだよ!」

無言で肯く鈴木君・・・・

「さみーから濡れないように非難しよう」

既に震える鈴木君・・・・

「釣れますかねぇ?・・・」

「ここまで寒いとわかんねえな・・・急に冷え込むとタフる事ってあるし・・・」

「いや、釣りますって!」

「まあ、フッコクラスなら釣れると思うけど・・」

「いや、釣りますって!」

「スピニングじゃフォーリングのバイト取れないし・・・」

「いや、絶対釣りますって!」

「・・・・・・・・そ、そうだね、きっと釣れるよ・・・」

 「釣れるじゃないですって。釣るですよ!」

聞けば乗りあう人が渋滞で一人はまって遅れているらしい。

その人が乗り込んだ瞬間に船は離岸して、最大30人くらい乗れそうな船に7人乗船でのゲームはスタートした。ディズニーシーのセンターオブジアースや、インディージョーンズが見えている。ポイントまで1時間と船長の放送・・・

「?ん?い、一時間?まさか・・・木更津・富津?・・・揺れるじゃん!大変だ〜・・・」

気が付けば飛行機が上空を舞っている。

「あ〜、成田まできちゃったか・・・・」

「ん?あれなんだ?!・・・・あ〜!羽田ジャン!」

「あそこあそこ、良太が黒鯛仕留めたとこ。あ、あそこ、オカッパリの人が並んでる所、ここ釣れるんだってさぁ・・・」

にわかシー・バスガイドになって、はしゃぎまくる僕。

なんのこっちゃ?と肯くだけの鈴木君。

船は最初のポイントへ到着した。先に釣っている船が目に入った。浦安といえばここという船「Y」と「W」。ここはタンカーポイント。いわば中継桟橋みたいなものだ。割と沖目にあるので水深も25〜30と深い。船長のご子息、インストラクターはバウにのっとり早速ジグを放り投げた・・・・・5秒後には釣っていた。船長のみんなを煽る声が響く。

「さあ、インストラクターは早くも1本目釣ってるよ〜!!」

「真下でいいよ!20メートル!フォーリングで食ってくるよ!!」

スピニング、ベイト半々の船上で、ベイトのロッドだけがしなる。

サイズが小さいが中層に浮いているようだ。ボトムを探りながらもバーチカルに攻める鈴木君。実はこれしか教えていない。水面を割って飛び出すジグ。

「巻き過ぎ巻き過ぎ!途中からもう一回落として良いんだよ!」

怒鳴る僕。真顔の鈴木君。

程なくして釣れたシーバスは45センチのフッコだった。

船中しばし入れ食いモードで興奮の坩堝。ブランカのピンクがあたりになっている。瞬間、目を疑った・・・・鈴木君のロッドがグリップから曲がっている。

船長「地面釣ったか?」

鈴木君「そ、そうみたいです」

インストラクター「あ〜、地面ですかねぇ・・・」とロッドを煽ってみる。

引っかかったジグを回収するときって、ラインはじいたりするが、やっぱりやってみた。まったく外れる様子が無いので、引っ張りあげることに・・・・

「かかってます。なんでしょうか?魚です。」と。

このナゾの大物がキャッチされるまで、釣りにならない僕。

「黒ソイの大物だったらすげーな、早くあげろよ!」

「落ちは、エイとかだったりするんですよね」

「なるほど、その引き方じゃ怪しいね」

結局、アカエイだった。鈴木君の上腕二等筋をずたずたにして、入れ食いモードを粉々にしていった流線型の憎いやつ。なぜかユーミンを思い出してしまう。絞め殺してやろうかと思った。

騒動も一段落して、ルアーの表面が傷だらけになってきたところで、タンカーが現れた。お行儀よくポイントを後にした。

雨はやがてみぞれに変わり、東京湾から立ち上る水蒸気が幻想的な世界を作り出す。工場のプラントの影からアーノルドシュワルツエネッガーが現れ、「I’ll be back !!」と言いそうだ。第2ポイントはそんな工場付近の、通称生け簀前。ここでは生け簀に魚が入りきってしまって不発。次にガス屋前。亀さんの話によると、ここでLPGの臭いを生産しているそうだが、この辺はその臭いでたまらない。

教科書通りのバーチカルを繰り返す鈴木君のロッドがまたナゾの大物をかけた。今度はティップのバイブレーションから魚だと解る。

「来た〜〜〜〜〜!!!!!!!」と、つばとも雨とも鼻水とも解らない液体を顔付近から発しながら、瞳孔を開いて獲物に襲い掛かる獣と化す鈴木。

グリップはロッドのカーブを継承して自然な曲線を描き、ドラグの音と氷雨の音が交じり合う。ラインは右に左に走って最高のひと時。

「ヒラマサだ〜〜!鈴木、絶対ばらすなよ〜〜!」

ンなわけあるはずも無いのに、なぜか興奮してしまう僕。

さっきの筋肉疲労がこの1本をさらに楽しいものにしているらしく、尻手を腹に当ててファイトする。ここでばれたらこのレポートも書かないつもりだっただが、ランディングに成功してしまったからには証拠をお見せしないわけにはいかなくなり、Dカメのシャッターをきった。どうやらネストを直撃してペアもろとも引きづりあげてしまったらしい。隣の人も同時に65センチを釣っていた。拝んだ魚は75センチだった。コンディションはすこぶる宜しく、ギラギラの魚体は舐めたいほどに美しかった。

あとが無いのでいろいろ回ったが、降り続くみぞれに視界を奪われ、危険を判断した船長は帰着を選んだ。

 

あれからというもの、75をキーワードに自慢され、事あるごとに釣れたではなく、釣ったと言いまくる鈴木君。

我がチームの格言は「釣ってから言え!」だったが、釣ったら何でも言いまくっていいことにはなっていないと思うのは僕だけだろうか・・・・・・