OOPS東京連絡所

シーバスレポート パート2  「リベンジ」

 

あれから2ヶ月間の間、浜名湖の旅を振り返ってはため息が出る思いをした。

帰ってから、何度もメールでお世話になった御礼や、リベンジの決意を送った。

仕事の都合と、潮の大小をにらみながら、休暇届を出し、いよいよリベンジの計画を立てることになった。交通費やら宿泊代をケチるために、キャンプして、夜中まで釣りまくってやろうと思い、かねてからの釣友、哲哉君に連絡を取る。めちゃくちゃな計画になればなるほどのってくる性格の哲哉は、二つ返事で行こうという事になった。彼は僕に東京湾奥のポイントを紹介してくれた東京湾ガイドでもあり、加賀FAでは輝かしいインストラクターの実績を持つ、経験の豊富なアングラーだ。今回は経費も安く、爆釣してやるぞ〜!しかし、このやる気がまた魚にばれていたとはこのとき気づく由もなかった・・・・

 

お店からメールが帰ってきたとき、計画の半分は成功した。キャンプ場が見つかったらしいのだ。誠さんが言うには「キャンプですか・・何とかします」というから、何とか安く済みそうだし、何しろ大潮の初日だ。良太君にはこの前の屈辱を晴らしてもらうべく、連絡を試みた。「今度はいいですよ!いま、最高に調子よく釣れまくっとります!」とのことだ。聴けばメッキやらなにやら他のターゲットも釣れ盛っており、今度の釣行は爆釣の兆し。頭の中は夜の浜名湖、ビッグシーバスのヘッドシェイク、ざらざらになる親指、良太君の笑顔と僕たちの得意げな笑い声が高々と響き渡っている。

 

予定日が近づくにつれ、そわそわしてくるが、家内の反応が心配だ。計画は話してあるが、このために車で寝る為のベッドや、備品を買いまくったりラインを巻き直したりしたお金は後日、カード会社から請求が来る事になる。そんな僕に、行ってらっしゃいとヘソクリを差し出す家内。よほど僕の眼が輝いていたと見える。一人でいい思いをする後ろめたさと、徹底した計画の楽しさが交錯する中、一路、夜の東名高速へ急いだ。お互い仕事を終わらせてからのドライブとあって、目がしょぼしょぼしながらではあるが、魚と夜遊びの話が尽きることなく盛り上がった。疲れを振り払うように、白いワゴンは夜の東名を突き抜けた。急ぐ旅ではないならとお互い制しながら、結局、休憩もろくに取らずに11時半に到着してしまった。1時過ぎを目標にしていたのだから我々のはやる気持ちは頂点に達していたのかもしれない。

 

ここが僕らのキャンプ場か・・・・・なるほど、良太が言ってた小屋がある。ここにテントを張るんだな?すると車はこう止めて・・・

がたがたしていると近所に通報されそうだと思いながらも例のマットに空気を入れる。浮き袋に空気を入れるときの「キーン」という音が闇夜に響いて、どきどきさせる。これが我が家の近所なら、きっと今ごろおまわりさんが現れているに違いない。

設営も終わり、ちょっと歓談。俺たちはこれから始まるマジカルワールドの夢の扉を開こうとしている。このままでも十分楽しいキャンプである。静かなキャンプ場(駐車場)の夜は疲れた2人を包み込み、もとの静粛を取り戻した。・・・・・と思ったら、携帯電話のけたたましい音が・・!

新宿のホストじゃないんだから、朝4時の呼び出しはないだろうと訳がわからないまま、でてみると、「しげ、悪いな・・」と哲哉の声。実況してみよう。

「今、俺のテントの周りに野犬かなんかいるんだ。出ていたゴミをあさってるみたいなんだ。」

う?うん。

「悪いけどエンジンかけて、ライトつけて追っ払ってくんない?」

え?な、なんだ?

「こえーよ!マジ、やばいって!」

う・うん・・・

ライトをつけてみた。しかし、エンジンをかけるには時間がやばすぎるだろうと戸惑っていたら、一匹の猫が小屋から走り出てきた。どうやら犯人はこの猫らしい。状況がわかってきたので、「哲哉、猫だ、猫。行っちゃったよ!」

「お〜、わりいわりい。俺、キャンプで昔怖い目にあってるからマジ、びびったんだよ」

ふーん、そーなんだ・・・・

携帯をきり、また、深い眠りに付いた。

 

朝起きてみるとびっくり。あんなに広いキャンプ場(駐車場)だったはずなのに、車の海になっているではないか?!なにやら哲哉が誠さんに車が入らないから入れなおすように頼まれたらしい。何が起きたかわからないまま、慌てて車の向きを変えた。呆然と状況を観察しながら、今できる自分たちが起こすべくアクションを必死で探したが、見つからない。

しばらくして、「こんなにお客さんが来るなんて、すごい店だね」と哲哉の言葉に目がさめた。誠さんに挨拶に行かなくては・・・

 

よく眠れた?の挨拶に、今朝の出来事を説明できず、「え?ま、まあ・・・」としどろもどろになりながら、まずはコーヒーとレストルーム。快く使わせてもらった。誠さんの話では、また釣れなくなっているらしい。僕らの頭の中はシーバスの事しか頭になかったわけだが、今回、いつまで滞在なのかを、はっきりさせていなかったために誠さんは実は困惑していた模様だ。(おかしい、良太には言っといたつもりが伝わってないのか?)と思いながらも岸釣りポイントを紹介してもらって、釣り人になった。噂の潮流と変なハエに翻弄されつついろいろと試みるものの、いっこうに魚の気配がない。結局ハゼを2〜3匹釣って、この日の昼の釣りは終了した。思い出すと、このとき哲哉は何も釣っていない。

 

夕方になって、期待の良太君が現れた。どうやら日中、仕事があって遊べなかったらしい。残念だが、本番は夜の湖上だ。期待に胸が張り裂けそうになりながら、簡単に哲哉を紹介した。

おりからの曇天に追い討ちをかけるように降り出した雨の中、僕らは必死でロッドを振り続けた。哲哉は僕の言うことを聞かないからベイトリールを何度もモモりながら苦戦中だ。

そんな中、快心の一撃!良太のロッドが大きく弧を描いた。悔しさ半分に急ぎルアーを回収して見守ること5秒、ロッドティップに伝わる生命反応は植物性の物に変わった。いま暴れられると、ばれてしまう・・・・ウイードごと寄せに入る良太。ドラマは水中に消えた。

 

東京湾奥でも感じるが、大きな奴が釣れだすと、レギュラーサイズのスクールは深場に落ちてしまう。いやな予感を抱きつつも、ヒットの実績に一同やる気を出した。

 

生命感のない湖面に繰り返すキャスティングの音もむなしく、セイゴ(バス用のでっかいルアーサイズ)を追加?した。

このサイズなら出るのかと期待しながら頑張るが、バイトすらない時間が過ぎてゆく。

最初のバイトははっきりしたものだった。ゴ・ゴゴンだ。何故のらないのか?あんなに明確にティップが入ってものらないなんて・・・。のったときのバイトは虹鱒のようだった。持っていかれる感じだった。小さいながらも浜名湖初ヒット!このサイズでもベイトを追いかけているんだなぁと感心しながら、3回目のバイトもこのサイズだった。ルアーを回収直前の出来事で、大慌てのランディング。というよりはあわせたら魚がもう上がっていた。良太君が「もう一度チャンスをください」という。釣らせたい光線が後光の様に輝く言葉だ。世の中のサービス業を営む人に見せてやりたい良太君でした。

 

船の生簀になぜか夏と同じワタリガニが入っていた。良太君が前日に捕獲したものらしい。失礼と解りながらも味噌汁にしてみたくなった。

店に戻ると早速魚の筋肉を解剖して食するわけだが、店の中に台所と包丁が完備されていて、獲物はみんな誠さんのストレス発散の的になっている。行き締めは魚を旨くする第1の条件だ。みんなでよってたかっての魚解剖に見入り、楽しんだ。

セイゴの刺身はことのほか旨くて、京浜運河のセイゴを想像できなくなってしまう。

食後、それぞれ明日の活動のために就寝の準備に別れた。雨にぬれた体をだましながら寝袋に入り込むと、一気に夢の中へいけた。

 

 

翌日の日曜日はは朝の車地獄を予想して早く目覚めていたのに、ぱったりと車は来なかった。

朝から曇天で幸先の悪いスタートになった。買い物ついでにご飯を食べようと弁天方面に行ってみた。哲哉のおごりで特上うなぎをご馳走になったが、まずくはないものの観光用だったらしい。知らないとは恐ろしいことだ。料理をする親父が練馬に住んでいたというから尚のことだまされた感じが強かったが、そこは哲哉のおごり。僕が文句をいう筋ではないのだ。

この日ははなから運河のハゼと戯れる予定で、店前の橋を狙った。哲哉はどうやら腹をこわしたらしく度々厠へ駆け込んでいる。うなぎが効いたのか?

飽きない程度にハゼが釣れて楽しい。ここで気が付いたんだが、哲哉はこっちにきて初めての魚はこの運河のハゼだった。思えば夏、僕もこの運河のハゼが唯一の獲物だった。

運河にも潮があり、流れが逆転したりする。橋脚を狙っていた僕たちは流れの下流側にあたりが多いことに気づいた。それと、ジアイがある。ここのハゼでもセオリーがあり、イチゲンさんが軽く流したくらいではボウズを喰らうことさえあるに違いないのだ。実際、向こう岸で釣っていたおじさんはボウズだ。

誠さんや、良太君の経験に感謝しながらハゼつりを楽しんだ。

僕の竿がしなった。ラインが走って、糸鳴りがした。ついに運河のセイゴを釣ったと思ったら、25センチはあろうか(大げさか・・)というハゼだった。それにしてもでかい。

うっ・・!何だこれ?・・・ハゼか?・・・ハゼだ!何なんだこのハゼ?

フックをはずしながら大笑いしていると、僕の指から赤いものが流れている。

うわ〜!ハゼに噛まれてる〜!い、いて〜!

確かに僕の左手の親指はざらざらになった。このハゼがカマハゼという魚だとは今まで知らなかった。夜、例の解剖実験で処理をして仕返しをしてから食したことは言うまでも無い。(料理長の奥様に感謝!!ハゼの皮をむくなんて、ブラックジャック並みです。)

 

4時ごろ予定通り良太君登場。カツオの大会は撃沈したそうだ。きっと優勝だろうと踏んでいたので、少しがっかりしながらメッキ狙いに湖上へ出てもらった。

日曜日とあって、プレジャーボートやらなんやらが湖上にたくさん浮いている。ポイントは見る影も無く、先客にやられていて、メッキ君たちはお休みだった。このとき猪鼻まで遠征して、深場を探ってみるものの魚の顔を見ることは無かった。猪鼻を湖上から見られるのは感動だった。石田や、旅館前にはたくさんの釣り人が太公望していた。

店に戻りって見ると昨日でかい本ゴチ釣ったお客さんがまたまた持ち込んでいた。

コチフィーバーだ。こんなことなら狙ってみればよかった・・・というのは釣り師の欲張りで、今度は盛期に来て狙ってみようと思う。

降り出した雨の中最後の挑戦に出向く。良太君は僕が東京からかけた電話での打ち合わせがちょっとずれていることに気づいていなかったらしい。僕はこの日釣りを楽しんだ後、翌日のお昼があいているので日中の釣りをやりましょうということになっていると思い込んでいたのだが、船の中で、いつ帰るかの話になって初めて解ったのだが、かなりずうずうしいスケジュールになっていたことに気づいて反省した。普通、生活って物があるんだよな・・・・

ここまで付き合ってくれた良太君や誠さんに感謝しなくちゃいけないのに、いつのまにか釣れないからもっとやらせて欲しいって言うエゴが生まれていた。パチンコで突っ込んじゃうタイプかな?

おりからの雨の中、それでも何とかチーバスを釣り、精神状態も限界を迎え、みんなギヴアップして納竿した。桟橋にうなぎが付いているとは知らなかった。

その夜は、的確なギヴアップのおかげで時間もあって、つれなかった談義に花を咲かせることが出来た。「OOPS東京連絡所」はこのとき発足したのである。チームの標語は「釣ってから言え!」だ。もちろん哲哉は黙っていた。(笑)

東京のシーバス事情とはまったく異なる浜名湖の魚。きっとどこかで何か通ずるものがあるに違いない。浜名湖に行って、シーバスを釣りたい人は、漁多ONEを一つ買ってもらって東京連絡所の所員になってもらおう。

この日、食したハゼの刺身は誰が釣ったものだったんだろう?僕らのはあんなにたくさん無かったから、2束釣った人のお土産か・・・しかしうまかったなぁ。

 

一夜明けて、もぞもぞしていると黒フォーマルに身を包んだ別人の誠さんが、ひどい雨の中挨拶に来た。法事があるらしい。僕たちはこんなにお邪魔していたんだ・・・・

誠さんのご両親に挨拶をしながらルール上のお支払いを済ませ、旅の終焉を迎えていた。

それだけをお支払いして、帰路につく。なんとも言いようの無い申し訳なさが残った。こんなに迷惑をかけてこれでいいものか?哲哉も僕もやるせなく無言の出発だった。

 

魚を求めて、沼津で狙ってみた。よく、イカやシーバスが出るポイントなんだけど・・・キャンプ生活ってやっぱり便利だ。

しかし釣果はあっさりやられて良太の電話。「釣れてますか〜?」・・・・「入れ食い!入れ食い!もう喰っちゃったよ!旨かったなぁ〜・・・・な〜ンて、釣れてね〜よ!!ムカツク!」

この日初めて僕もテントを張った。ずっと僕を守ってきてくれたアライ・エアライズあの雨が嘘のように晴れ上がった夜だった。小さなテントは胎内の安らぎで、真剣に眠れる。

翌日も貧乏根性で半島の防波堤にトライしたが、撃沈。あきらめて沼津の有名食堂にてまたもや哲哉のご馳走になる。これがこのあとの道中の睡魔を連れてきてしまうのだ。帰り道、哲哉が運転してくれて、僕は夢の中で、もう喰えない・・・などと言っている間に集中工事も通過していた。なんていい奴なんだ!!

最後までグロッキーな僕をエスコートしてくれた哲哉に感謝!哲哉がいなければこの旅も出来なかった。

細かな反省をやりたいが、お互い疲れが込んできている。母上にハゼをてんぷらにしてもらい、ビールのつまみに。タックルを片付けながら一言言ってみた。「今度はいつにしようか?」って。