OOP・S 東京連絡所  

シーバスレポート 6   梅雨前線 ウルルン滞在記

 

     本当にいくのか・・・

この春めでたく職場を異動させられ、激戦区の本社勤務になった僕は内心、釣りと仕事

を天秤にかける様で、複雑な気持ちで日々を過ごしていた・・・・

昨年の秋にビッグサイズを見事ビギナーズラックした鈴木君に浜名湖行きの計画を話し、同行をさそってみると、僕の古巣でもある彼の持ち場の大変さを熟知している私に「どう考えても無理です、会社をやめれば何とかなります・・・」と半ば愚痴とも言える返事を返してよこした・・・・・・

 

気の遠くなるような繁忙の時間の流れに身を任せながら、夜の浜名湖を思い浮かべてみる。ロッドに伝わる確かな生命反応が現実のように感じられる。走るライン、ジャンプしたシルバーグローの憎いやつは次の瞬間ウィードに突っ込んで僕を焦らせる・・・・

ボートエッジで暴れまくり、闇夜に響き渡るランディングの騒ぎ・・・

 

気がつくと下車する駅だった。危うく乗り過ごすところだった僕の背中につたう汗が、本格的な梅雨の到来を告げていた。ハイシーズンの到来だ。

ダメ元と、からかい半分で鈴木にメールを送ってみた。

@13・14・15の予定を組んだ。君の座席は確保した・・・・

なかなか返事がこない・・・・いつもなら即返なのに。

返事のないメールに、電話で攻撃してみた。するとどうだろう?彼は「連れてってください・・・」の、たった一言で潔くあんぽんたんの仲間入りを果たしたのだったのだ。

メールを返さなかったのは、直接話してバカさ加減を確認したかったのだろう、言葉じゃなくては通じないものは今も昔も変わらないらしい。こういうノリを備えたやつは我がチームに必要だ。

仕事の都合や、新婚生活、金の工面に必死になっている奴の返事とは思えない・・

誘った俺が悪いのか、のって来た鈴木が悪いのか?

ともあれ、「本当にいくのか?」と何度も念を押し、用意するものを告げた。

内心、一人の旅が2人になって顔からは喜びを隠せない。哲哉に引き続き、浜名湖を愛する仲間が又一人増えた瞬間でもあった。

 

     クワガタとワカナゴ

恒例の天気図には梅雨前線と低気圧がしっかり私の行く手をさえぎっていた。

「良太ぁ、こりゃオフショアは出れんかも知れんのう・・?」

「しげちゃん、最悪クワガタ取りにでも行こうとおもっとるけど、どう?」

「最高最高!何も出来なくなったところで、いければ最高に楽しいし!」

「何もできんくなるこたぁ無いと思うけど、夜中にクワガタ取りに行くなんていいかなと思ってさ!実はもう、一匹捕まえてあるんだ。お土産用に・・・」

「なんと!・・・・」

この辺で鈍感な僕も良太の言っていることが解って来た。さすがに胸がいっぱいになってきて言葉が詰まってきた。

確かに僕は釣れない。天気にも、潮にも時合いにも見離され、釣れても隅田川サイズ1本で、いつも帰路に着く。自分の実力(運も実力の内!)の無さに打ちのめされながら、何とかやってきた。しかし救いの手はいつも本部の方からやってきて、冷たく冷えた僕の心を解かしてくれるのだ。

「良太、本当に最悪、な〜〜〜んにも釣れなくても俺はメンバーとして本部に帰省するんだ!みんなと楽しめれば何でもいいよ〜!!」

実は目頭が熱くなってきていて、かなり困っていた。

「家のぼうずにクワガタをもって帰れば喜ぶだろう・・・カブトムシの飼育なんかしてるNさんだから、天然のノコをもって帰れば喜ぶんじゃないか?」

秋田君と良太の会話が聞こえるような気がしてきた・・・・・・

実際、作戦会議はあったに違いない。

 

「じゃんじゃんじゃ〜ん、じゃんじゃんじゃ〜ん、ずん・ずん・ずん・ずん・・・」

火サスのテーマは鈴木のしるしだ。

「今、例の交差点を曲がったところです・・」

思えば鈴木とは仕事がらみで一緒に遊ぶことはなかなか出来なかった・・・

この旅でもっとどっぷりシーバスの虜になることを祈りつつ、僕と鈴木の珍道中は始まった。

 

「な、なんだその格好は?・・・」

「くつろぎっすよ!くつろぎ。」

「なにも、甚平でこなくたって・・」

たわいのない会話は東名高速を滑り出した愛車、呼称フェラーリ308GTBことセレナ2000CCを、ようやく通いなれてきた東海へ引き連れてパーキングエリアまで続く。

 

もともと鈴木君とは年齢の差や仕事での立場もあって、会話が「研修」のようになってしまう。名づけて「浜名湖研修」は続いた。それにしても僕は良くしゃべる男だ。

静岡県も西側に入ったころから降り出した雨は、西インターを降りると土砂降りになった。

村櫛方面へ行く道はカエルと水しぶきで道路が浮き上がって見えるほどだ。交差点では完全に停止しながら方角を確かめつつ進む。村櫛半島の夜は僕たちを拒んでいるかのように雨脚は激しくなるばかり・・・・

やはり晴れ男の鈴木君を連れてきてもダメか・・・・・などと思いながらフィッシング沖の東京連絡所専用エリアに駐車して、睡眠を迎えた。

時刻は1時を少しまわったところだった様に思う。今度はエンジンをかけていても雨音でわからないだろう・・・・

 

何度かエアコンを入れたり消したりしながら本格的に眠ってしまい、気がつくと雨は上がり、さわやかとはちょっと違う雰囲気の朝を迎えていた。例の猫はいない。哲哉の姿も無い。

あまりに早く起きてしまったし、実は鈴木君に頼んで仕込んできたエサを使いに漁港あたりへ行ってみることにした。早朝の浜名湖は小雨の中で、そして静かに僕らを迎えてくれた。もう、ワカナゴ釣をする人の影はどこかに消えていた。

潮止まりのようだ。これから始まる脅威の潮流を「研修」させるにはもってこいの時間だ。

何度か投げ込んで、とりあえずフグやらタコやらメゴチやらの獲物を拾い、今回全ボウズを免れることになった。鈴木君ははじめて知るメゴチの角にビビリながら楽しんでいる。

思えば哲哉はこんなふうに竿を振っても釣れなかったのだなあ・・・

僕らはどきどきしながら次第に流れが始まる湖面を後にした。

 

笑顔の再会

しばらく楽しんで、ベースキャンプに戻ると店が開いている。パソコンに向かっていた誠さんは変わらない笑顔で僕らを迎えてくれた。こんなときの気持ちを表現するにはどんな言葉が似合うのだろう・・・・・・「来ました!」と声をかけ、店内に入った。他に言葉が見つからない。

新メンバーの鈴木君の紹介もそこそこに、例のテーブルにつく。天気の話、近況、釣物、昨日の良太の獲物の話、弾丸のように飛び交う会話。すべてが僕らの体に突き刺さっては溶けてゆく。そしてまるで感染力の強いウィルスに犯されてゆくようにその世界に入り込んでゆく。気がつけばここの住人のような気さえしてくるから不思議だ。

 

朝、気がついたのだが、うっかりコンタクトレンズのケアキットを忘れてしまった。どこかで購入しなければきつい。この辺で購入できる店を紹介してもらいたかったが、「良太に頼んでみては・・・」と誠さんのアドヴァイスをもらい、電話してみた。

本人は朝風呂に入っていたらしく、電話口に出ない。仕方なく、メールで救援を頼んでみた。

しばらくたって到着した良太の手には、既にキットが握られていた。おそらく朝から必死で探してくれたに違いない。さりげないが、こういうところが良太なのだ。(感謝!!)

前回(実は3月にも来ている)浜松の駅で再会を果たしたことが思い出される。

あの日「来たぞ〜〜〜〜〜」とランボーのように叫んでしまった自分が、なんともうれしくてたまらなかった。

 

スイカとシーバスの冊を誠さんに渡す良太。なにを期待しているのか、腰が自然に浮いてしまう。早速何か釣に行こう!

誠さんの薦めもあって、キスをやることに。

しかし浜名湖は、でかいのがうじゃうじゃいる。キスはその日のメソッドを解ってしまえば一束釣も夢じゃないターゲットではあるが、その肝を捜すのが至難。しかし、全員でこの美しき小物を大漁にして昼食をとることにした。とりあえず快調な滑り出しに、なんとなく安堵感を覚えた。素人に楽しく釣らせるテクニックは目を見張る良太のスキル。連れてきて良かった。これでシーバスをゲットすれば何も言うことはないのだ・・・が・・・。

 

     タコの足

ひとしきりピンク色に透き通る魚体を堪能し、昼となった。しかしこの昼が昼刻をとうにすぎていて、普通に食事ができない。コンビニで食料を調達して、再度湖上へ・・・・

今度は鰯やアジの子供たちをスズナリにして楽しんだ。頭痛を訴える鈴木君をよそに、時折現れるさばの攻撃をしのぎながら久しぶりの「大漁」を味わった。運良く持ち合わせてくれた「必殺・タコルアー」を流しながら、探ると今度はまともなサイズのタコ。朝方ひっかけたものとは比べる意味がないサイズだった。

狙いをタコにセットして、本格的にタコ探しをやってみたが、下手のバラしで獲物は1パイにとどまった。しかし、初めての獲物が今回はたくさん釣れる。あらためて浜名湖の持つ威力を思い知らされる。飯を食うより今の時間を力いっぱい釣りに使いたい・・・・・

ここで一句。「釣り師なら誰もが思う、今度こそ・・」御粗末。

シーバスゲームをやりに来て、滞在時間のほとんどを別の釣りや、遊びに使い切る。

ここまでやれたらシーバスが本命から外れていく・・・・・

バス釣りに行って、釣れないからギルを狙ったり、フナに切替えたりした経験があるけど、そんな気軽な外道狙いじゃない。面白いのだ。体力の限界まで釣りまくりたい。ここまでやれるフィールドはほかに無いし、そんな仲間もほかにいない。キチガイなのだから。

 

獲物のタコと、キス、鰯などを例の包丁がさばき、僕と鈴木君は自分たちには珍しいタコのヌメリ取りに苦戦した。包丁人良太のおかげでうまい魚がテーブルを湧かせた。

「タコの足の先っちょは食わないほうがいいらしいぜ」との誠さん。

「え?何でですか」

「解らないけど、なんだか毒があるとか無いとか聞いたことがある」

「へえ〜〜」(なんとなく納得する僕たち)

こんな会話をしながら、キスのフライ?と、タコなどをいただいた。

このタコの味は読者の諸兄には申し訳ないけど、うまかった。表現すれば嘘になると思われるので、差し控えさせていただきます。

 

そこへ赤いTシャツがまぶしいナイスガイ、たまちゃんの登場。たった今、先っちょを食うなといっていたそのタコの足を“ぽい”っと口に放り込み、「うまいじゃん!」・・・・・

鈴木と目を合わせひそかな楽しさを味わいつつ、このさわやかな未知なるメンバーに挨拶をした。「チームにはこんなまともなメンバーが居たのだ・・・・」と思ってしまうほど、玉ちゃんの笑顔はさわやかに広がった。

たわいの無い会話を少ししただろうか、実は仕込まれていた夜のシーバス大会の話に・・。

「聞いてないよ〜〜」といいたいところだが、なかなか一緒には実現できない大会参加が僕らを待っていたのだ。次々に揃ってゆくメンバー、いやがうえにも盛り上がるムード。タックルにリギングを施すメンバー、レインギアに袖を通すコウジ君。麦藁帽子をかぶる良太・・・・・?どこか違うなぁ・・

麦藁帽子は実はスーパーアイテムだが、このシーンに似合わないと判断する良太。

開会宣言を誠さんが行うと、ボルテージは最高潮に達した。

それぞれの船はノンボーターの僕らを乗せて闇夜の国へ漕ぎ出した・・・・

 

     ビッグシーバスの行方

“厳正なる阿弥陀くじ”で良太号、幸二号に分乗した僕たちを雨が逆さに降るようなボイルが待ち受けていた。

良太の戦略はこうだ。

まず、キーパー場で魚を出す。ポイントを暖めておき、時合いを見て一気にキッカーを狙う・・・・はずだった。

湖上を知り尽くした良太のキーパー場では、それぞれにブラックバスもどきをキャッチした。大会を意識しなければここで粘れば釣果を伸ばす結果を得られたかもしれない。数がほしいときはこういった場所をいくつも知っていなければならない。計画は順調のように思われた。

次に作戦通りにジャストなタイミングで予定のポイントに到着。そこら中でミサイルが落ちるようなボイルの音が響き渡っている。落下物とその威力に応じた着水音が想像できるだろうか。“バシャ”というよりは“ドッポン”と“バッシャン”を混ぜたような音だ。知るひとぞしるサイズの音。キーパー場で過ごすことによってこの巨大なスクールを暖めていたとは、B・A・S・Sのトーナメントプロ顔負けの戦略と言えないだろうか。浜名湖の場合、一端シェアすると得るものが思った以上に減ってしまうことが多い。ボートが見える範囲でのゲームは既にシェアを意味する。あてずっぽにここを見つけてしまうアングラーもいるだろうが、時合いを見計らうまでは技術が必要になる。

ともあれ、実戦開始だ。トマホークミサイルに追尾センサー付の弾丸を連発していく。なかなか優秀な回避装置をつけているらしく、ヒットしない。潮の速度が変化してゆく中、攻め方を変えながら攻撃を続けたが、目標を撃破するには至らなかった・・・・

気がつけば、いつのまにか闇夜にランディングの騒ぎが起きている。このときS君のネットにはトマホークミサイルが収まっていた。

 

大会もタイムリミットに近づき、それぞれ帰着に向かう。

検量では驚きのサイズが記録されていった。S君の魚が結果的に優勝。重量、体長ともに文句の無いサイズだった。果たしてノーフィッシュの鈴木君、キャスティングの練習を隅田川で再度行う羽目となった。

たまちゃんの魚がまたでかかった。幾分細身に見えるのは、S君の獲物が太かったせいだろう。僕と良太はブラックバスもどきを手に、記念撮影を行った。HPの日記に載っているが、良太はこのサイズをもっていることに恥ずかしいらしく、顔を伏せている。(今度は写真に細工するかな?・・・)忘れられない思い出を僕らの胸に刻んだ瞬間だ。

 

     クワガタ採集

大会も終わり、店内でのこと。体力的にも精神的にも限界を迎えていた僕らに無情にも声をかけ、クワガタ採集に誘う良太と幸二。正直に言うとこのときのことをあまり覚えていない。本当に限界だったに違いない。

幸二君の車に乗り、湖西へ向かったはずなのに道中のことは何も覚えていない。

さらに、ポイントに到着してコンタクトレンズが乾ききって、落下した。

予備がなくなっているだけにびびったが、幸二君の目薬が僕のレンズを救ってくれた。

数箇所の“ポイント”を巡り、各種クワガタを採集した。これだけの時間にあっという間に採集するにはやはりプロの力が必要なのか・・・・(幸二君はその道のプロだということがよく解った)

あるポイントに行くと、ちょっとした溝を跳び越えなければならなかった。眠さと、体の硬さと、最近になってめっきり付いてきた贅肉のおかげで、みんなが軽々と飛び越えるその溝に苦心せざるを得なかった。

なんとも哀愁を感じるクワガタ採集だった。

 

フリートに帰り、ゆっくりシャワーまで使った僕。引き換え、駐車場にそれぞれ車で寝る2人。鈴木君はすっかりチヨにおびえてバリケードを作って寝た。寝込みの顔を舐められるのが怖いのだそうだ。

 

     低気圧との戦い

翌日から天候が怪しくなってきた。例によって入れ食いのデイゲームなどを楽しみながら、日中を過ごした僕たちは明日の行方を占っていた。何とか御土産を確保したい僕は、この悪い天候の中、わがままを通し、潮干狩りへ無理やり連れて行ってもらった。

初回の思い出と家族のことが思い出される・・・・一人、親父がほっつき歩くには少しばかり距離があると、自分で反省しているのだろう。また家族で来たいものだ。

しかし、この潮干狩りが大変なことになるのだ。

折から体長を崩しかけている鈴木君、雨の中で肩まで浸かっての作業は遊びというより、試練といった感じになってしまった。ここまで突っ込んでしまうのは、やはりノーマルでない証拠なのか?鈴木君という尺度で自分たちを反省してみると、やはりクレイジーだった。(鈴木がクレイジーだと思って誘ってきたのに・・・・)(良太・幸二君、アサリうまかった!ありがとね!)

 

予約した船が出られるのなら、予定通りオフショア大会。ダメなら今夜は夕方からシーバスに・・・・・。

せわしない僕たちは、ほとんどシーバス行きに傾いていく雰囲気に乗り気だった。しかし、良太の祈りは海に届き、無事出船が決定した。リギングまで終えていたタックルをほどく力は残っていなかった。

明日のオフショアを思うとアドレナリンが体を興奮させて夢には青物が乱舞する・・・

今夜は良太邸泊だ。向かう車の中でメールをもらったが、なにやら怪しい。

気が付けば鈴木と良太は豊橋へ向かっていた。

少しの間、仲間との語らい。

「初めて釣ったルアーって何?」

「スピナーベイトだったなぁ」

「俺クランクベイト」

「引き代がたまらないんだよな」

 

「この花火、良太がぶっ放したものかなぁ?」

「多分そうだね」

「凄いよなぁ、この花火は・・」

 

「就職って大変だよね」

「サラリーマンは辛いねぇ」

 

「こんなロッドがほしいな」

「ルアーって知らないうちにたまるよね」

「良太の部屋ってルアーのゴミ箱状態・・・・」

 

 

こんな会話がどれほど続いたか・・・・楽しい仲間たちとの語らいとはこのように始まり、このように続く。

先に寝かせてもらったが、後で聞いたらみんな2人が帰るまで待っていたというから凄い。

怪しい夜の豊橋で、何が起きていたかについては最後までわからなかったが、僕の想像ではキャバクラ行って、風俗行って来たに違いないと思っている。なぜなら翌日目の下が・・・・

 

朝を迎え、酔い止めの薬の商品名がなんだかんだ言いながら港に向かった。

何を食べ、何を飲んだか覚えていない。しかし、船のレストで排便したのは僕だけのようだ。今切を出る前に済ませたのが幸運だった。

 

船にはブルージャンキーのメンバーが集まっていた。今回僕たちの旅を支えてくれるメンバーがこんなところにも居てくれた・・・・・結果的にこのメンバーの一人がこの後僕のアシストをしてくれることになった。

 

     ビッグゲーム

今切を出てどれくらい経っただろう・・・・御土産を先に釣らせてくれる船長の優しさに甘えて、サバの入れ食いを楽しんだ。既に鈴木君はマグロに・・・・(やっぱり昨日行ったな?)

大会の優勝者も・・・・次々にマグロ化していく。僕も怪しい・・・

御土産も出来たことだし、ポイントを変えようと船長のアドヴァイスをもらい、外洋へ向かった。何マイル行ったのか解らない。これが遠州灘なのか・・・・

広い。広すぎる。(あたりまえか・・・)

陸がまったく見えなくなり、うねりの種類が変わってきてしばらく経った頃、流木を発見した。もっとも、僕は何も発見できなかったのだが、船長をはじめ乗組員の諸君は群がるシイラの魚群を見つけたらしい。お解りのことと思うが、オフショアのルアーの代表的なターゲットはこのシイラだ。

戦闘開始。絨毯爆撃のトップウォータープラグに反撃してきたのは80オーバーのレインボーカラー、マヒマヒ(シイラは食用としても有名)のアタックだ!

すかさず群れから離しにかかる良太。アシストは幸二君だ。何度か伸されながらのランディングだ。オフショアででかいのがかかると水面近くに浮上した獲物がその魚体を見せるとき、彼らがこの広い海の生き物であることを強く感じる。ギラっとひかり、ボトムに向かって走り出す。耐える良太。何度か綱引きの末デッキにひれ伏した魚体は、ヒレに傷など持たない勇敢なでこっぱちだった・・・・

他にも数多いスクールを発見していたが、勝利のアクセルを吹かし、次なる戦場へ走った。

この広い海原を走って、こういった流木やパヤオを拾ってゆく。とてつもなく低い可能性にかけてガソリンを焚く。いくつ流木を攻めたことだろうか、今度の獲物は流線型の憎い奴だった。この流木には付いている。良太のロッドがまたもや地球に向かっている。今度の相手はツムブリだった。季節はまさに夏に向かっているし、僕は一人でマサだと勘違いして興奮してしまったが、上がってきた戦闘員はとても鮮やかなラインが入っていた・・・

こういったゲームではルアーローテーションが戦況を決める。メンバー全員が数投ごとに試してみるが、僕のチョイスはポッパーだった。

誰かがまた掛けた。しかし負けじとキャストを繰り返す僕にもついにその瞬間は訪れた。

船長からお借りしたPENNの右巻きにギクシャクしながら(慌てて左手でリールを巻こうとして空を切る・・・)大あわせ。奴は一瞬こっちに向かって走りながら、にらみを利かせて沖に走り出し、ジャンプ!シーバスのようにここで軽くならない・・・・しかしファイト中にシッティングポーズになってしまう。ロッドエンドを腹に当てながらあおられること3回、尻餅をついてしまうのだ。PENNのドラグを滑らせた経験の無い僕にとって奴は移動中に何度も見かけたマーリンのような手ごたえ。

興奮の坩堝にはまった僕の横に走り寄る良太。このときの良太の笑顔は一生忘れられない思い出になった。

ブルージャンキーの仲間がアシストしてくれ、何とか群れから引き離すことに成功した。我がことのように喜ぶメンバーの歓喜に包まれながら無事にランディングを迎えた。

 

釣れない・・・・このほの暗い闇のそこから這い出す為には、釣るしかないのだ。

あの手この手で導いてくれたメンバーに、感謝の気持ちが本気で湧いてくる。

遠州灘の獲物を東京までつれてゆくのだ。

 

何度もセイルフィッシュらしき背びれを発見し、爆撃を行ったが相手にしてくれず、サメにまで投げる始末の船中、亀の姿を発見したときはさすがに和んだ。しかし、これほどカジキがいるのなら、本格的に狙っている人は結構釣れてるんじゃないかな・・・?サイズはわからないけど、スタンディングでも間違って釣れたりしないとは限らないし。

 

こうして僕らのアタックは幕を閉じた。帰りの船中では気が抜けた幸二君の船酔いがスタートし、ひとしきり冗談や獲物のサイズを語らい、解っちゃいるけど来てしまう旅の終焉を待つだけとなった。

今度また、この釣りをしよう・・・浜名湖もこの後いいかもしれない・・・・

東京にも遊びに来てくれ・・・

     ・・言葉が続かなくなってゆく。いつもこうなる。もっと楽しんでいたい。

もっと楽しませたい・・・

どうしてこんなにもこの海や仲間は僕たちを受け入れてくれるのか。

海風に涙が飛んでゆく。この旅の間のことが走馬灯のように浮かんでは消える。

波は次第に穏やかになり、気が付けば今切をくぐっていた。

魚をクーラーに入れながら、別れの言葉を捜した。

だから余計に言葉少なくなってゆく。どんどん場が盛り下がっていく。

今度いつこんなに楽しい瞬間に出会えるかわからない。もっと楽しく別れを決めなくては・・・・・

時刻はいやがうえにも僕たちを襲い、結局考えつかなかった言葉、

「じゃ、また・・!有難う!また来るから・・・・」

これだけが口をついて出てきた。精一杯だった。

港を出てクラクションで挨拶を交わしたが、鈴木君とはなかなか口が聞けなかった。

帰り道、コンビニで氷を買いながらまた浜名湖研修をはじめたが、何を喋っても嘘になりそうですぐに終了した。

 

 

あとがき

 

そろそろ秋の声をきいて、台風のニュースが夕方のテレビに出ている。

伊豆で釣ってきたメジナの水槽を手入れした。エサをやりながらふと思う。

この次は、鱸を飼ってみようか・・・・

この原稿を打っていると、あのときのことがリアルに思い出される。

船の上の良太が、僕の曲がったロッドを見たときの顔ったら無かった。

最高に楽しかったあの瞬間。男はみんなあんな瞬間のために生きているんじゃないかな?

 

浜名湖のハゼは、そろそろシーズンを迎える頃だろうか。誠さんと良太がライヴで東京まで持ってきてくれたことを思い出すなぁ。

 

今年は僕の人事異動や、本店(僕はデパートに勤めている・・)の大工事で大忙しの毎日。10万円のロッドを惜しみなく買う馬鹿もいれば、10万円の靴を買う方も大勢さんです。

このレポートがこれほどまでに遅くなったのは、いいわけですが本当に死ぬほど忙しかった・・・・6月のレポートが9月では遅すぎか・・・・

何しろ、短時間にやりたい放題の凄い旅でした。この場を借りて御世話になったかたがたに感謝の意を表します・・・・。また御世話になると思うんですが・・

 

先日、良太と幸二が上京した。やりたいことを整理している間に、渋滞したり地震でびびったりして時間だけはすぎていった。一緒に遊んだだけでも良しとするか!